2021-02-21 2022-05-04

英語論文を書くときに気をつけていること

Version: 0.2 (最終更新日:2022/05/04)

免責事項
本稿は他の記事と同じく個人的な経験・分析を基に執筆されています.本稿の記載内容を参考に執筆された学会論文やDissertation,レポート等の文法のミスが指摘されても一切の責任を負いかねます.くれぐれも自己責任でご利用ください.

1. 論文中での時制

分野によってかなりしきたりが異なります.本稿で想定しているのは自然言語処理や機械学習系の論文です.

Abstract

少なくとも機械学習や自然言語処理分野では「現在形」で書かれることが多い.

先行研究がやったことは「過去形」
「最近やられたぞ」ということを強調したいときは現在完了も使う.(イギリスではアメリカよりも何かにつけて現在完了を使うことが多いように感じます.)

Problem Settings / Proposed Method / Methodology

問題設定とかは「現在形」 提案手法の説明も「現在形」

Experimental Setup

実験設定・操作の説明は過去形で書く.  

Experiments / Discussion

  • 実験結果の数値等について述べるとき:「現在形」か「過去形」
    例:The accuracy of the proposed method is/was significantly higher…

    過去形を使う派と現在形を使う派の二通りの流儀があるように思います.おそらく前者は実験は過去に行われたものなので,その得られた結果も過去のものという認識で過去形にしているのだと思います.後者は実験手順には再現性があるので,その操作を行うと論文に記載の結果が必ず得られるという説明の意味で現在形にしているのだと思います.いずれにせよどちらかに統一して書くのが無難だと思います.

  • 実験結果の原因・理由等の分析:「現在形」
    例: We suppose / assume that (考察)

    論文中の”その場”で分析している体なので現在形で書くものと思われます.

  • 実験結果自体を述べるとき:「現在形」
    例: Figure 1 illustrates / shows /…

    説明文なので現在形になります.

Conclusion

論文を書き出す前の出来事(先行研究等):過去形
論文中で取り組んだこと(結果の分析等):現在完了形や場合によっては過去形
例: we have introduced ~~~

なお現在完了形が作るthat節の中は時制の一致を引き起こしません.

2. 細かい記法

強調

単に強調するだけならダブルコーテーションよりもイタリック(斜体)にしておくのが無難です.

セミコロン

文中のセミコロン「:」は強調や言い換えの意味で使われます.

時制の一致

時制の一致は従属節に適応されます.なので”that S + V”のような典型的なケースだけでなく,一応関係代名詞等も含まれます.

3. 冠詞周り

“both” の用法

冠詞をつけても問題はありませんが,大抵の場合は省略されます.ちなみに順番は,both + (冠詞) + 名詞 です.

“all” の用法

all + 冠詞 + 名詞の順番です.

省略語の冠詞

時と場合によるので,冠詞をつける場合とつけない場合でググってヒット件数の比較をすることをお勧めしますが,基本的なルールは下記の通りです.

  • 一つの単語として発音するものには冠詞は不要
    例:COVID-19

  • アルファベットで発音するものには冠詞をつける
    例:TPP (Trans-Pacific Partnership)

どこに冠詞をつけるか?

  • 二つの異なるものを並べるとき:両方に冠詞
  • 二つで一つのものを並べるとき:先頭に冠詞

図表のキャプション

冠詞を省略する,telegraphicに書く流派があるように思います.したがって,投稿する学会の傾向に合わせて冠詞を省略するか決めると良いでしょう.

4. 小ネタ等

Spelling

イギリスで学位論文等を執筆する際はくれぐれもイギリス英語で書くようにしましょう.アメリカ英語で書くと査読する方の心象を損ねる可能性があります.

言い回しの正確性

基本的にネイティブでない人がどれだけ言い回しが自然かどうかを自分で判断する術は,ググる意外に手段がないと思います.気になる言い回しが出たら,ダブルコーテーションで囲って検索にかけましょう.

Rebuttalの心構え

“Courtesy”を常に忘れないで対応する.

参考:COLING 2018 - PC chairs report back: On the effectiveness of author response